時は巻き戻る Poem by Gaku Haghiwara

時は巻き戻る

私はずっと、海を越えての友人でありました。
私は彼を好きでしたが、彼は私を愛しておりました。
全ては私の書いた本から起こったのです。
彼にとりわけ贔屓されていると気付かれたのは
彼がむごたらしくあなたを虐殺してからで
それもあなたが私の本を褒めなかったからでした。
彼は彼なりに最善を尽くし、その脈がもしかしたら
この重い頭に今夜は嵌め込まれたのかも知れません。
次の月まで、私が生きようとしたならば、
周りは私を落ち着かせようとしたでしょう、
あるいは寝間着から伸ばした私の手が
彼を見つけるまでは。遠い国から彼は来て
この貧しい場所に私の看護をしようと
私の吸物を作り私の顔を洗い
私の火を灯し、そして何よりずっと
古き良きユーモアに満ちた笑顔で話に付き合うものだから
つい私も言ってしまう「あまり近づかないで頂戴
来るなら殺して、夜も昼も止まらないんだから
こんなの熱で動悸や痙攣するより酷いじゃない
彼のぎこちない靴のきしみったら!」
私にはわかります、彼ならこうしたに違いないと。
セント・ポールが2時を打つようにはっきりと。
思いますに、むしろ私こそが悩みの種。
そうです、会わないよりは会った方が良い。
手を挙げるだけで彼をそこに座らせられたなら
でも私の前には空の椅子しかありませんから
今夜、私の頭痛は本当にきつくて
もう読むことも考えることも辛くて
紫色になっている指ではペンも持てないほど
この屋根裏部屋は凍りつく寒さで!

さて私は女性であった筈。そこに男が目覚める、
笑う幽鬼にして蛇たる者共の王子が
私の中で、彼女の名に於て祈るや
運命はその途に何やら化け物を寄越す
彼女へ捧げる私の愛も、色褪せてしまうような
突き上げられ表向き我慢させられるような
なので私も自分に示すことにしようか、海よりも
深い情熱を私が要することになるのだと
それ良くないことばかり考えるわ想像は異様だわ
寝たきりのその姿は弱々しい等など
皆批評家は言い、まだまだ非難は続くのだが
怒りの言葉は一言だってあなたに届きはしない。
しかし喜んで欲しい、私が迷っていることに
我が頬を彼女の足元に差し出そうか
我が足元に踏み躙るよりはましかと、
かのフィレンツェ人の栄誉を。
そしてあなたは見ることになる、如何に悪魔が足掻くかを
火の神が寄越されるか、さもなくば他の終末を迎えるかを!
部屋へ上っては下りつつ、あなたに告げよう、
この屋根裏は、愛の最高の冠を以て飾られよう、
そして愛の完璧な宴を以て供されようと。
思うに彼女が為に何を失おうと、
身も心も平和も名誉も構わない、
青年期の終わりや人たる者が目標にするようなもの一切。
かくて我が魂は、罪作りな肉体にあって
満杯に満たされ、外にも内にも食われよう
彼女の顔、彼女の目、
唇、可愛らしい顎、口元なる
影が揺らぎを以て。そして彼女は
(あなたには告げよう)穏やかに決することだろう、
私は火炙りにされるべきであると。
それで彼女の欲望が達せられるなら佳し
そして彼女をして招待せしめよう
明日の夜、有名な大舞踏会へ。

天国は存在するのかも知れません。地獄は存在するに違いありません。
そしてその間に、私達の大地が此処に存在するのです。善哉!

This is a translation of the poem Time's Revenges by Robert Browning
Thursday, October 1, 2020
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