1
耳元に誰かぶつくさ言うのは何なのか?
「もはやこれまでとなりますに、
涙の谷とする程に、私は世界を見てきたか?」
ええ尊い御方よ、足りませぬ。
2
嘗て私の見たものが、今一度見えるのです
薬瓶が立ち並ぶその場所は
テーブルの端、それが田舎の小径なのです、
我が寝台脇から塀が続く。
3
小径は斜面を描きます、瓶の形をそのままに、
家の中からも見つけられたでしょう
庭の塀より上からは。そこのカーテンは青、
あるいは緑ですか、健康な人の目に?
4
私には、それは懐かしい初夏の天気を齎す
小径と塀の天上の青です。
そして「エーテル」と銘打たれた彼方の瓶は
全てに抜きん出た家です。
5
とある高台、栓の付近のそこらに、
初夏のとある日、私を見守る
女の子が。解っていますよ、淫らなことと、
私の貧しい心は狂っています。
6
唯一、そこへの道程は…塀の横にぴったり
張り付き、にじり寄るしかなかったものです
家中の目を避けるためには、2つの目を除き。
家人たちはその家を 「番小屋」としたものです。
7
その小径を辿る何の権利が、この穀潰しにあったやら?
それでも、ごく近くまで這い寄れたのは、
有難い塀の助けを借りて、…家人たちの耳目はきっとどうやら
まん丸に見開かれた事でしょうが、
8
彼女と私共に捕まることはありませんでした、
彼女が屋根裏を出るとき、そこは、
「エーテル」と銘打たれた瓶の縁の傍でした、
息を潜めて段々を伝いました、
9
そして薔薇に覆われた門の傍に降り立って。愛しいかな、
愛し合うがため、逢引に通ったのです。
どれほど悲しく悪しく頭のおかしいことでしたか…
しかしそのときには、なんとも甘美なことでした!