なぜか
くだものの内がわへ
涼しい雨足がたっていたのだ
その明け方
葱と豆腐は
香ばしい匂いの粒になって
光と軽さをきそっていたのだ
そしておんなの脱ぎすてた
寝巻の波もまた
冷たい受話器に手をもたれ
砂が光りはじめるのを
見つめていたのだ
鷗も溶けるしずかな
潮の重いあけがた
ひと晩じゅう
眠らなかった者たちに
昨日と今日の境目が
あっただろうか
ふたりは天を容れるほらあなだった
そこに充ちるマンダラの地図だった
それでもおんなは
なぜか
香ばしい森だったのだ
あかつきの奥へ走る
あかつきの光だったのだ
たからかな蒼空の瀧音に
恍惚となったいちまいの
葉っぱを見たのだ
葉っぱはなぜか
野のへりを
ゆっくりと旅していたのだ
なぜか
そのいちまいの葉っぱは
ぼくの言葉で
ひっきりなしに
しゃべっていたのだ
...
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